好きだけど。

私の求めていたモノは、
指の隙間をスルスルと落ちていって、もう帰ってこないのだ。
どんなに望んでも。
今は今で素敵かもしれない。
でも、私の観たかったものじゃない。
もっと胸に迫る、演技を超えた舞台、
役を生きる瞬間に流れる空気さえも変わる。
そんなものが観たかった。


彼女はきっと一作ごとにものすごいスピードで成長してゆく。
次々作くらいには立派なトップ娘役になっているだろう。
素直に取り組む姿勢はとても好感が持てるし、好きだ。
だけど、これからの時間はきっと「最後の時間」
だから、そのすべての残された時間を、もっと濃縮された時間にしたかった。
コメディでもシリアスでも人生が見えてくるような芝居。
舞台の上で共に生きる二人。
そんなものが観たかった。